わたしのピンクの錠剤
その瞬間だった。
あいかなを厳しく押さえつけていた刑務官のひとりが、ゆっくり立ち上がった。
職務を放棄して裁判官の方に近づいていく。
様子がおかしい。
もうひとりの刑務官が異変に気付き、手をのばした。
「おい、どうしたんだ」
しかし、腕をつかまれた刑務官はその手をうるさそうに払いのけるだけで、聞く耳を持たなかった。
「美智子先生は犯人じゃない。俺が犯人なんだ」
裁判官の前で刑務官の甲高いしゃがれ声が響いた。
法廷内は水を打ったようにシーンと静まりかえった。
さっきの親父の証言と、いま聞いたばかりの刑務官の言葉が交錯する。