わたしのピンクの錠剤
奇想天外に思えた親父の証言が俄然現実味を帯びてきた。
本当にあいかなという別人格が被告人から刑務官に乗り移ったのか、誰もが固唾を呑んで見守っていた。
「おい、しっかりしろ」
もう一人の刑務官がその刑務官を後ろから抱きかかえるように席に連れ戻そうとすると、その刑務官は暴れはじめた。
「放せよ。放せってんだ、この野郎」
あいかなに取り憑かれた刑務官は後ろから羽交い締めにされ、何とか逃れようと足をばたつかせながら激しく抵抗する。
「やめて、お願いよぉ、やめてください」
美智子先生の声だった。
常軌を逸した刑務官は疲れ果てたようにその場に倒れ込んだ。