わたしのピンクの錠剤
 
「本当のことを話すってんだから黙って聞けよ」

どこからか、野太い艶やかな声が響いた。



倒れ込んだ刑務官の声じゃない。

一気にみんなの緊張が高まった。


再びあいかなは別の誰かに乗り移ったのか。

みんなが声の主を捜して視線を彷徨わせる。



すると裁判長が慌てて席を立ち、後ずさりしているのが見てとれた。



「あの男はあいかちゃんをずっとつけ回していやがったんだ」


その野太い声の主は裁判官のひとりだった。


裁判長を追いかけるように立ち上がる。

裁判長は恐れおののき、若いもうひとりの裁判官を盾にするように後ろ向きに階段を下りる。


最後の段で足を取られて尻もちをつくと傍聴席の方へと後ろ手に後ずさりしていった。


あいかなに取り憑かれた裁判官もゆっくりと階段をおりて裁判長の後を追って傍聴席の前へと進んでいく。



みんな顔を引きつらせ、動くことさえできない。


 
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