わたしのピンクの錠剤
その時だった。
取り憑かれた裁判官の前に美智子先生が立ちふさがった。
払いのけようとする裁判官の手をつかんで放さない。
「だめっ。こっちへこないで。あいかちゃん、逃げて。早く逃げてーっ」
美智子先生はあいかなを近づかせないように盾になり、大声で叫んだ。
その言葉が発端だった。
みんなが出口へ殺到した。
罵声が飛び交い、修羅場と化した。
それでも、わたしは動かなかった。
裁判官の姿をしたあいかなをじっと見つめた。
それに応えるようにあいかなも、わたしをじっと見つめていた。
美智子先生の「だめぇっ」という言葉が響く。
でも、わたしはあいかなを見つめたまま、『戻っておいで』って言うように大きく頷いた。