わたしのピンクの錠剤
 
あの日、達哉は母子手帳をこっそり引っ張り出していた。

俺はじっと達哉の様子を伺っていた。

 母:下平愛子
 父:下平達哉

そう記された母子手帳の「子の保護者」欄を達哉はじっと見ていた。

そして、思い立ったように、その下の出生届出用に空白になっている「子の氏名」欄に「下平哀哉」と書いたんだ。


どうして哀哉なのか、俺には到底理解できなかった。

自分の子供に哀哉と名付けるなんて、達哉の気が知れなかった。


 
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