わたしのピンクの錠剤
そもそも、小さい頃は二人とも達哉だった。
幼稚園ぐらいまでは、別に違和感もなく、そういうものだと思っていた。
それが、小学生になったころから、変だと思い始めた。
ひとつの身体を二人で使ってるヤツなんて、他には誰もいなかったんだ。
あれは小学3年の夏休み、月遅れのお盆のことだった。
親戚の集まりがあり、何かの拍子に達哉には哀哉という双子の弟がいたことを知った。
産まれた時には死んでいた哀哉のことが、俺は妙に気になったんだ。
それは達哉も同じだった。
しばらくすると、達哉は俺のことを哀哉と呼び始めた。
俺は嫌だった。
死んだ人の名前で呼ばれたくなかった。
嫌だと言うと、達哉は口をきかなくなった。
次の日、どうして今までといっしょじゃダメなのかってと言うと、二人が同じ名前なんておかしいと達哉は答えた。
俺は認めたくなかった。
でも、タイミングを見計らったように母親は俺らを病院に連れていったんだ。
医者は俺らを病気だと言った。
普通じゃないとも、二重人格だとも言った。
母親は自分のせいだと言って泣いた。
俺には普通がわからなかった。
達哉はだから言ったじゃないかと俺を責めた。
俺のせいでみんなが壊れたんだと言った。