わたしのピンクの錠剤
 
小田健一が現れたのはそんな時だった。


俺は思わずあいかちゃんの身体から飛び出していた。

今にして思えば、飛び出す必要なんてなかったのにな。

きっと、気が動転していたんだろう。



ともかく、俺は吸い寄せられるように美智子先生の中にたどり着いた。



でも、すぐに激しい後悔の念に襲われたんだ。

そこは凍り付きそうなほどに寒くて寒くて仕方なかった。




俺を残して小田健一とあいかちゃんが部屋を出ていくと、俺はその寒さも相まって心細くてたまらなくなった。


美智子先生は椅子に腰掛け呆然としたままだったし、焦点の合わない視線はテーブルを捉えたまま微動だにしなかった。


 
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