わたしのピンクの錠剤
公園内は薄暗く、水銀ランプに照らされたところだけが浮かび上がって見えた。
他の人の姿は見あたらない。
水銀灯から少し離れたベンチに腰を下ろすと光の具合か男の顔が青白く見えた。
「何だか、デートみたいですな」
男の言葉にあきれ、舌打ちしたい気持ちを抑える。
「どうしてつけ回すんだ」
「つけ回すだなんて、そんな乱暴な言い方はよして下さいよ。ただ、小田さんには気をつけた方がいいとお伝えしたかっただけなんですから」
「小田健一?」
「そう。あの人、とんでもない人なんです」
男は声をひそめる。
「人殺しなんです」
「いいかげんなことを言うな」
「もちろん、小田さんが直接手を下したわけじゃありませんよ。でも、不倫相手の女が自分の亭主を殺したんです。小田さんだって許されるはずないじゃないですか。小田さんが殺したも同然ですよ」
「バカなっ、小田健一は関係ないだろ」
「そりゃまあ、その不倫相手の女ってのがハッとするような絶世の美女で、非道いあばずれだったそうですから、それに惑わされたんでしょうがねぇ」
「あ、愛子のことを悪く言うな」