わたしのピンクの錠剤
 
「今から学校に行くつもりかい。ご苦労なこった」

目を合わせないように男の横をゆっくり通り過ぎる。


「お父さん、いないんだろ」

わたしは聞こえないふりをする。


男の舌打ちする音が聞こえた。
心が破裂しそうなほどに、恐ろしかった。


「なあ、」

男の声が聞こえたような気がした。

しかし、そこで突然、記憶が途切れた。
 

 
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