わたしのピンクの錠剤
 
憮然としたままだった親父が、視線を玄関に向けた。

「教えてやれよ」

玄関から、聞き覚えのある甲高い声が響いた。



振り向くと、玄関に男の人が立っていた。

白くなった髪の毛を頭の後ろで結んでいる。


病院の先生?


「立花さん・・」
「すまんな。鍵が開いてたもんでな。それでどうなんだ。小田が殺したのか?」


「馬鹿なこと、言わないでくださいよ。俺がそんな男に見えますか。それより、どうしてここがわかったんですか」

「聞いて、ないよな。俺があいかちゃんの担当医師になったんだ」


親父はわたしの顔を見た。

わたしは頷く。


「お父さん、先生を知ってるの?」

「ああ、医学部で同級生だった立花さんだ。この人はな、法学部を出て司法試験に落ちてから、医学部に入ったっていう奇特な方だ」


親父のこんな嬉しそうな顔は珍しい。

自分で医学部なんて言ってるし。


「司法試験に落ちたは余計だな」


 
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