わたしのピンクの錠剤
 
親父の機嫌がいいこともあって、わたしは思いきって尋ねた。

「加藤先生にきかれたんだけど、わたしの病名はなんなの?」

横から親父が睨みつける。

立花先生はそんな親父を目で制した。


「DIDって呼ばれている。解離性同一性障害っていう名前だ。俗に言う、二重人格だな」

「にじゅうじんかく?」

「わかりやすく言うとね、普通の人は心の中に部屋をひとつだけ持っている。だけど、あいかちゃんの心には部屋が二つある。そんなイメージかな」

「二つあると、ダメなの?」

「そんなことないよ。ダメなもんか。でも、二つの部屋を行ったり来たりできないから、ちょっと困るんだ」

「何がこまるの?」

「あいかちゃんは、ひとつの部屋しか出入りできないんだ。しかも、時々ドアがバタンと閉まって、出られなくなっちゃう。困るだろ?
それにあいかちゃんはもうひとつの部屋がどうなってるか全然知らない。心配だろ?
だから、ドアを取払ってしまおうってわけだ」


 
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