わたしのピンクの錠剤
 
先生は親父の方に向き直った。

「ここに来たのは他でもない、原因を確かめるためなんだ」


親父は何か言いかけ、その言葉を飲み込んだ。

そして、思い直したように口を開く。

「立花さん、つもる話もあるし、どこか出ましょうか」

しかし、先生は親父の誘いに乗るつもりはないらしい。


「オレが何を言いたいのかわかるだろ」

親父は視線を外し、ややつっけんどんに言い放った。


「性的虐待があったかって聞きたいんでしょ」

「さすが、その通りだ」


親父はあきれたって顔をする。


「普通、DIDだったら、迷うことなく性的虐待を疑う。だけどなぁ、俺は小田をよく知ってる。こりゃ、変だなと思ったんだ」


 
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