わたしのピンクの錠剤
マンションの角部屋、先生の部屋は真っ暗なままだった。
薄暗い階段を上がると、通路の先に人影が見えた。
親父?
「あいかか?」
「さあ、どうかしら。お・や・じ」
「おまえか」
「残念でしたぁ」
「あぁ、そうだな」
「あれ、否定しないの?」
「帰ろうか」
「美智子先生は?」
「いないみたいだ」
やっぱり。
「立花先生は?」
「あぁ、帰った。あの人も悪い人じゃないんだけどな」
「ううん、私はあの先生、結構好きだよ」
親父は私の手を取って、歩きはじめた。