わたしのピンクの錠剤
「おまえ、愛子なのか?」
「何?あいかなの次はあいこ?」
「いや、すまん。おまえが急に大人になったみたいで、そんな気がしたんだ」
「あいこって、誰なの?」
「高校の同級生だった。何かといえば俺に『短気は損気だよ』って言ってたんだ」
「親父は昔っから切れやすかったんだね」
「そんなんじゃないさ」
「親父さぁ、むかし万年筆を折ったことなかった?」
「万年筆?」
「そう。教室で万年筆を折って『短気は損気だよ』って言われたことなかった?」
親父は歩みを止めた。
「おまえ、覚えてるのか?」
私は頷いた。