わたしのピンクの錠剤
「先生っ」
駆け寄ろうとする私の顔をみるなり、先生は顔を引きつらせた。
「いや、ダメ、こないで」
先生は怯えたように声を震わせる。
後ずさりするようにベッドを上へ上へと移動し、行き場を失った先生はそこにあった花瓶を私に向かって投げつけた。
花瓶は私の横をすり抜け、床に落ちた。
ガチャン、と心臓が止まりそうな音を響かせた。
病室内がシンと静まりかえる。
花が散乱し、水がうごめいていた。
「美智子っ、どうしたんだ」
美智子先生は私から目を離そうとしない。
「お願いよぉ、こないで」
「せんせい」
「ダメッ、こないで。ダメェーッ」