わたしのピンクの錠剤
 
気がつくと、私はベッドの中にいた。


記憶が途切れた後のようだった。

わたしは、・・見あたらない。



起き上がろうとして、激しい胸の痛みを覚えた。

首も胸の痛みで上げられない。


パジャマの中を慎重に手で探ると胸の回りに厚いサポーターが巻いてあった。

「目が覚めた?」

 どうして?


天井しか見えない私の前に顔を出したのは、社長の奥さんの陽子さんだった。


「たまたま通りかかった人が、川に飛び込むところを見てたんですって。昨日のこと、覚えてる?」

そう言われても、今はまだ記憶を辿るのは怖かった。

「わたし、ケガしてるの?」

「肋骨と左足の骨が折れてる。内臓は大丈夫だったみたい。わかってる?運が良かったのよ」


運がよかった?


運がよかったから生きてるの。

それとも、運が悪かったから生きてるの。


チクリと胸が痛んだ。


 
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