幸せまでの距離

「ほんと、こんなはずじゃなかっ たのに……」

つぶやくと今度は、絶望感に苛 (さいな)まれた。

今まで無気力に生きてきた分、変 わりたかった。

本当の意味で「生きたい」と思っ た。

ミズキやマナのように夢を追った り、人並みに恋をしたり、生きる ことが幸せだと感じられるように なりたいと考えていた。

そのために、メイは日々、努力し ていたつもりだ。

養子になった時、昔を思い出す物 は全て処分したし、以前住んでい た場所にも極力近づかないように している。

それなのに、いまだに夜、悪夢に うなされる。

他人との付き合い方がわからな い。

傷つける方法ならどれだけでも思 い浮かぶのに、人をいたわる心を 持てない。

変わりたいのに変われない、と 言った方が正しい。

途切れることのない、負のスパイ ラル。

むしろ、日を重ねるごとに重症化 している気がした。

「私、何のためにこの世に生まれ てきたんだろう……?」

無意識のうちにそんな独り言が漏 れるほど、メイは自分の存在を希 薄なものに感じていた。
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