幸せまでの距離



解散を言い渡されたメグルは、 しっくりこない気分で自宅に戻っ た。

祖父・一郎はとっくに就寝してお り、明かりの灯らない廊下は暗 く、古さで軋(きし)む床の音が 不気味に響く。

ミズキの言っていた通り、たしか に疲れてはいたが、メグルもマナ と同じく、メイを探し続けたいと 思っていた。

だが、ミズキに精神的な負担をか けたくなくて、こうして大人しく 帰宅してきた次第。

メイとは、高校入学以来の付き合 いである。

出会った頃は、まさかここまで長 い付き合いになるとは思っていな かったけれど、今ではかけがえの ない大切な友達である。

メグルも何度かメイに電話をかけ ていたが、いっこうにつながらな い。

40分ほど前、まだマナと行動し ていた頃、メイに電話をかける と、一度だけ、通話中だと示す音 が流れてきたことがある。

あの時メイは、誰と電話していた のだろう?

「教えて……。メイがいなくなっ たのは、やっぱりリク君のことが 原因なの?

電話の相手、リク君じゃないよ ね……?」

部屋に入ってベッドに座るとケー タイを強くにぎりしめ、メグルは つぶやいた。

「いつでもここに帰って来ていい んだよ? メイ……。

お願いだから、変な考えは起こさ ないで……。

お願い。お願い……」

目をつぶると、数時間前に見たメ イの様子が浮かんだ。

何かにとりつかれたみたいに、狂 乱していたメイ。

全て彼女が投げつけたのだろう、 本や文房具などが、カーペット敷 きのフローリングに散乱してい た。

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