幸せまでの距離
風呂に入ることも忘れて、メグル は祈り続けた。
メイが無事でいてくれますよう に。
危ない目にあっていませんよう に。
自分を頼って連絡してきてくれま すように。
こちらから連絡できないのが、ひ どく歯がゆかった。
しばらくすると、まるでメグルの 願いが通じたみたいに、ケータイ が鳴った。
だが、それは期待していたメイか らの電話ではなく、別の意味で心 待ちにしていたメールだった。
「トウマさん……!?」
一度は別れたが、「いつか改めて 付き合おう」という話をしていた 男性からのものである。
相手の名前は池上トウマ。
メグルより9つ年上で、舞台俳優 を目指して劇団に所属している人 物である。
メグルは急いで、トウマからの メールを確認した。
《会いたい。
今から○○まで、来てくれる?》
こんな時間に呼び出しのメールを してくるなんて珍しいとは思った が、メグルは紅潮する頬をごまか すことが出来なかった。
トウマに会いたい。
もしかしたら、晴れて正式に付き 合えることになるのかもしれな い。
《もちろんです!
すぐ行きます!!》
そう返事をすると手早く化粧直し をし、トウマが指定してきた待ち 合わせ場所にタクシーで向かっ た。