幸せまでの距離


メイから連絡が来て喜んでいたの も束(つか)の間。

その電話は一方的に切られてし まった。

リクはそれから、長い間そこに立 ち尽くしていた。

「リク、メイちゃん何て言ってた の!?」

ショウマは何度かそう呼びかけて いたが、リクは放心状態で全くこ たえようとはしない。

「リク、リクっ……」

ショウマは両手でリクの肩をつか み、力一杯揺り動かしたりもして みたが、リクの視点は空を見つめ たままで、体から魂が抜けたよう になっている。

いつまでもこんな所にいるわけに もいかない。

防波堤に響く波の音を聞きながら 重たい気分でリクを見つめている と、ショウマのケータイにミズキ からの連絡があった。

メイを探しに出ていた一同が解散 することになったと聞き、ショウ マはすんなりそれを受け入れる と、再びリクに話しかけた。

「リク。今日は解散だって。

マナちゃんもメグルちゃんも、家 に帰ったらしい。

今夜見つからなかったら、ミズキ ちゃんちで警察に捜索願い出すこ とにしたって……」

「…………そっか」

一言だけ反応すると、リクは砂浜 に向けてゆっくり歩きだした。

ショウマは無言でついていく。

リクは思った。

自分がメイのためにしてあ げられることは、もう何もない、 と……。
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