幸せまでの距離

防波堤の脇には、砂浜が広がって いた。

二人がそこに足を踏み入れると、 サクサクと小気味いい音がする。

ここには蛍光灯の明かりが全く届 かず真っ暗だったが、長い間外に いて目が暗さに慣れていたので、 海と空を結ぶ地平線がくっきり見 えた。

海に近付くほどに波の音が大きく 感じられる。

それと同じ感覚で、リクの心も激 しく揺さぶられた。

「っく……っ……」

嗚咽(おえつ)が静かな夜の浜辺 に響く。

それがリクのものだと知るのに、 多くの時間はかからなかった。

リクの後ろを歩いていたショウマ が弾かれたようにリクの前に回り こむと、リクの頬は大量の涙で濡 れていた。

月光が、隠したいそれをこれでも かというほどクッキリ照らし出 す。

「……」

「……られた……」

「……」

「……メイに……。

振られた……」

リクはその場でヒザをつけて座り 込むと、両手を地面につけて泣き 崩れた。

細かい砂が、リクの手を包むよう にめりこむ。

「振られた!?

……どうして?」

にわかには信じられず、ショウマ はそう返した。
< 254 / 777 >

この作品をシェア

pagetop