幸せまでの距離

『あんたに関わるとロクなことが ない。

あんたは幸せかもしれないけど、 私は全然幸せじゃない。

あんたといると自分が嫌になるだ け』

メイに言われた言葉が、何度も何 度もリクの頭の中で再生されてい た。

息ができないほど、苦しかった。

両手で力一杯砂をにぎりしめて も、この痛みを抑えるには全然足 りない。

苦しくて仕方がない。

泣けば泣くほど、メイに拒絶され た現実は変えられないと感じる。

好きな人から自分の存在を否定さ れるのはこんなにもつらいことな のだと、初めて思い知った。

これまで、メイのそっけない言動 や気まぐれに付き合ってこれたリ クにも、耐えがたいことだった。

メイを想うことすら、許されない というのか……。

ショウマはリクの状態を見てだい たいのことを察したが、声をかけ ずにはいられなかった。

「リク、気持ちはわかるけど、 ちゃんと話して……!」

ショウマにそう言われ、リクはさ らに実感した。

メイと別れた、今を。

普段ひょうひょうとしているショ ウマが、血相を変えてリクをなだ めている。

この光景が、ウソであってほし い。

客観的な視点に逃げることで、リ クは自分を保った。
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