幸せまでの距離


いつまでもこうしているわけには いかない。

けれど、家に帰る気にもなれな い。

公園の茂みで、メイはただ、一人 の時間に身を預けていた。

この時間帯にここに来るのは初め てなので今までは知らなかった が、夜になるとここは怪しい雰囲 気に染められる。

文教施設が多いので、昼間はメイ のような専門学生や大学生の姿で 溢れているが、今は、着飾った若 い女性が歳の離れた男性と歩いて いる姿が目立つ。

「……援交? まさかね」

メイは独り言をつぶやき、ただな らない気持ちで道行く男女を見て いた。

こうして茂みの中から彼らの様子 を見ていると、その気はないのに のぞきをしている気分になる。

「……理解できない」

キャバ嬢らしき女性がスーツ姿の 男性と腕を組んで歩いている様子 を見て、メイはつぶやいた。

どうして、ああも簡単に男性に媚 びを売ることができるのか、メイ には疑問でしかないのだ。

実の母親が男にすがって生きてい た様が重なり、嫌悪感に苛まれ る。

何組かそういう二人組が通り過ぎ た。

うんざりした気分でため息をつく と、目を疑う光景がメイの視界に 飛び込んできた。

「……メグル!?」
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