幸せまでの距離

まるでそれが彼女の日常であるか のように、メグルは派手なドレス を着て中年男性に笑顔を向けてい た。

男性はまんざらでもなさそうな顔 でメグルの腰に手を回している。

「……ちょっと、何で!?」

メイは自分のことのように怒りを 覚えた。

高校時代、たしかにメイは、不本 意ながらもメグルに誘われるがま ま、グループの女子達と共に成人 男性の遊びに付き合い金をもらっ ていた。

いわゆる、援助交際というもの。

だが、相手の男性と体の関係を持 つことは断固拒否していたし、メ グルもそうだった。

他のメンバーは法に触れるレベル で援助交際を楽しんでいたらしい が、メグルはそういうのを嫌がっ ていた。

それが、なぜ今、こんなことに なっている?

メイは目を皿のようにしてメグル 達の様子を見た。

あんなところで、メグルは一体何 をしているのだろう。

男性は表通りでタクシーをつかま えるとメグルに手を振り、自宅に 帰っていったようだ。

タクシーが見えなくなると、メグ ルはどっと疲れた顔をし、自分の 後ろを振り向く。

メイが茂みから出て彼女に声をか けようとすると、メグルが振り向 いた方向から、これまた予想外な 人物が現れた。
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