幸せまでの距離

メグルは憂鬱そうだった表情を一 変し、

「無事だったんだね!

どこ行ってたの!?

みんな心配してたんだよ!」

と、メイに抱き着いた。

香水と化粧のにおいが、メイの鼻 を刺激する。

「……ちょっとね」

はっきり答えず言葉を濁し、メグ ルの腕をゆっくり下ろすと、メイ はカナデに訊(き)いた。

「あんた、こんなとこでメグルと 何してんの?」

「…………」

カナデは何も言わず目を伏せてい たが、しばらくするとメグルを睨 みつけ、

「もう、トウマに近付かないで」

とだけ言い、きらびやかなビル群 のネオンにつま先を向け、ツカツ カと歩き去っていった。

「……メイ、ありがとう」

「なにが?」

「……うん」

「?」

メグルに感謝される理由が分から ず、メイは首を傾げる。

みんながどれだけ探しても見つか らなかったメイが、自分の前に姿 を現してくれた。

その喜びと同じくらい、メグルは 悲しみを抱えていた――。
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