幸せまでの距離

「リクとは二度と会わない」

「え? それってどういう……」

メグルの言葉を、メイは質問を返 すことで遮った。

「それより、こっちも訊きたいん だけど、何であんな場所でカナデ と一緒にいたの……?

メグル、援交嫌いじゃなかったっ け?」

「……」

メグルはしばらくの間を置いた 後、

「まさか、メイとカナデちゃんが 友達だなんて思わなかった」

「あんなの、友達じゃないよ。

専門学校が一緒なだけ。

私、あいつに嫌われてるし」

メイは説明書を朗読するような トーンでそう言った。

メグルは気まずそうに、

「……そっか」

「逆にこっちも、メグルがカナデ と知り合いだなんて思わなかっ た」

「知り合いっていうか、今日が初 対面……」

メグルは震える声でそう言うと、 泣きそうな顔をした。

気を緩めたら涙が止まらなくなり そうだったので、しばらく上を向 いて目を固く閉じ、泣きたい気分 を抑えてから、メグルは話し出し た。

「前、メイに話したよね。

好きな人ができたって」

「ああ……。付き合うの保留にし てた男?」

「……うん。

その人ね、トウマさんっていうん だけど、トウマさんには大きな夢 があったの。

だから、そのことが落ち着くまで は付き合ったりできないって言わ れてて。

お互い好きな気持ちはあったんだ けどね」
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