幸せまでの距離

「大きな夢?」

メイはそう訊きつつも、メグルが カナデと関わることになった経緯 が読めた気がした。

入学式の日、カナデもまた、夢の ある男と交際中だと話していたか らだ。

だが、何も言わずメグルの言葉を 待つ。

「トウマさんとは、ちゃんと付き 合えるようになるまで会わないっ て決めてたんだけど、今日、帰っ てきたらトウマさんから会いた いってメールが来て……。

もしかしたら、トウマさんの夢が 叶って、ちゃんと付き合ってくれ るようになるのかもって。

そう思ったら嬉しくて」

嬉々とした表情を変え、メグルは 暗い目に戻った。

「……トウマさんに会いに行った ら、カナデちゃんが居たの。

『トウマなら来ないよ』って、勝 ち誇ったような目でこっちを見て た……」

人を馬鹿にするような目つきで笑 いつつも、カナデは明らかにメグ ルに怒りを抱いていた。

オシャレをしてやってきたメグル に、カナデは言った。

「あいつ金無いからね。

トウマのケータイ代も、私が出し てやってんの。

だから、私がトウマのケータイい じっても文句は言われない」

トウマの浮気に気付いたカナデ は、トウマのケータイからメグル の番号を探し出し、あえてトウマ のケータイからメグル宛てにメー ルを送ったのだ。

メグルに会うために……。

トウマの電話帳の中で、メグルの 番号は男の名前で登録してあった が、カナデはそれが女の番号だと すぐに気付いた。

「トウマ、友達少ないからね。

夢追い人なんてやってると、周り もだんだん冷たくなっていくん だって。

それでも私はトウマの数少ない交 友関係全部知ってるから、あんた がトウマの浮気相手だってこと も、すぐにわかったんだよ」

カナデはそう言い、メグルをビル の壁に強く突き飛ばした。
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