幸せまでの距離

スイーツ販売イベント初日。

メイのグループが補助したデコレーショ ンケーキは、予定より早く完売した。

というのも、メイ達の手伝った先輩とい うのが、某有名ホテルのパティシエだっ たからである。


この日のことは、前もって雑誌などにも 紹介されていたらしい。

そのうえ、有名ホテルのパティシエが 作ったケーキとあれば、客が行列を作る のも無理はなかった。

ゴールデンウイークの影響も大きい。


カナデが無断欠席をしたことで、多少作 業が遅れてしまったが、この日の予定は 問題なく進められた。


販売するものが無くなったメイ達は、夕 方近くになってようやく休憩を取ること ができた。

結局、カナデは来なかった。


外食に行くというメンバー達の誘いを断 り、メイは一人、デパートの控え室に 入った。

ソファーに座り、今日のことを振り返 る。

いつかは自分も、人に感動されるような 菓子を作れるようになるだろうか。

活躍中の先輩パティシエを見て刺激さ れ、メイの気持ちは高まっていた。

ようやく、一歩、自分の足で自分の人生 を歩き出せた気がする。


肉体的疲れもあったが、無事イベント初 日を終えると、充実感の方が上回ってい た。

気持ちが落ち着くと、じょじょに今朝の 気分が戻ってくる。

「カナデ……」

カナデはなぜ、来なかったのだろう?

コックコートの内ポケットをあさり、メ イはケータイを確認した。

《新着メール 2件》

一通はリクからで、もう一通はカナデか らだった。

カナデのメールを先に見る。

《今までありがとう。バイバイ》

「……!!」

勢いよく立ち上がり、メイは控え室を飛 び出した。


ようやく来たカナデからの連絡は、永遠 の別れをにおわすものだった。
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