幸せまでの距離

メールの受信時間を見ると、カナデから メールがきたのは30分前。

ちょうど、メイ達が休憩に入った頃だ。

“何のためのマナーモードだよ……!”

バイブレーション機能と、メールに気づ けなかった自分。

メイはどちらにもいらついた。


コックコートのまま、着替えもせず、彼 女は外に出ようとした。

しかし、まだイベントの最中。

何も言わずにデパートを離れるわけには いかない。

今朝、カナデが欠席しただけで、現場の 作業が行き詰まったことを思い出し、メ イは売場にいる女性教師を探した。


人の行き来で混み合う売場で、メイはよ うやく教師を見つけ、事情を話した。

「星崎さん、どうしたの?

いま、みんなと一緒に休憩じゃなかっ た?」

「カナデから連絡があって……。

心配なんで、様子見てきます。

いいですか?」

「そうね……。休憩後の片付けは、して もらわなきゃ困るんだけど……」

しばらく考えた後、女教師はメイが外に 出るのを許した。

「無駄欠席するくらいだし、生駒さんに も、やむを得ない事情があるみたい ね……。

何かわかったら、先生にも連絡ちょうだ い。

生駒さん、全然連絡くれないのよ。

あ、外に行くなら、着替えてからにしな さいね」

「ありがとうございます……!」

感謝の言葉と同時に、メイは更衣室に向 けて走り出した。


デパートの売り場を出る寸前、背後から 声をかけられる。

「メイ!」

「リク……」

先日、二人は気まずい別れ方をした。

しかし、リクはそのことを全く気にして いないように、

「おつかれ!

いきなり来てごめんな。

一応、メールはしたんだけど。

忙しかった?」
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