ちび×ひめ Ⅰ
この嫌な感じ――視線は今に始まったことではない。
昔からあたしは、変なもの――妖(あやかし)やら悪魔、妖怪という名の類が見えたりする。
幼い頃は、それが何なのかということが分からなく、
先生や大人たち、家族にもそのことを度々話したりもしたが、皆決まって――『え? あそこには何もないわよ』と言われた。
そのせいで、色々な人たちに嘘つき呼ばわりされ、気味悪がられ、いじめられてたが、
流石に時が経つにつれて、それが何なのかが分かってきて、そういうことは言わなくなった。
妖怪や悪魔や幽霊、妖と呼ばれる類のもので、人に見えない存在だ。
彼ら――妖怪と言われる類いの者たちは、人に害をなすと一般的に言われているが、
そういう者ばかりではないと、幼い頃、祖父であった達見 司郎【タツミ シロウ】(千堂院は父親方の名字で、母親が旧性達見だった)に言われたことがある。
祖父は、あたしと同じで――人でないモノたちを視る力があった。
そのせいか、祖父は一族に嫌われ避けられ、化け物扱いをされていたそうだ。
祖父は自分と同じ境遇を持っているあたしに、同情したのか幼いときによく可愛がってくれたり、色んな事を教えてくれた。
祖父と居るとき、不思議と嫌ではなかった。
むしろ、とても心地よく、彼らと一緒にいるより安心できるものだった。
不思議な人だったってことしか、いまとなっては思い出せない。
親戚や両親に一度だけ、祖父のことを訊いてみたことがあった。
皆どれも同じ答えで、分からない人、不思議な人。
そして祖父は、あたしと違って、妖たちを退治することが出来たそうだ。
あたしは、視ること、聴くこと、喋ること、触ることはできても、退治はできない。