ちび×ひめ Ⅰ
ぎゅっと抱きしめてくる海ちゃんに、あたしは嬉しいような悲しいような気持ちになってきた。
海ちゃんの柔らかくて膨よかな胸が顔に当たっている。
それに比べてあたしは…
目線を下にずらし、自分の胸を見た。
・・・・・・・・・・
よし、見なかったことにしておきましょう!
本当に泣きたい気分になってくるので脳内消去☆ てへっと我ながらキモいわーと
ひとり脳内ツッコミする。
それにしても…―――
海ちゃんから…ううん、海ちゃんの髪からはすごくいい香りがする。
何のシャンプー使ってるんだろう?
香水とシャンプーの香りが合わさっていてすごくいい匂いだ。
海ちゃんらしい、
爽やかでいて甘くしつこくなくふんわりとした柔らかな花の香りだ。
どこの香水? どこのシャンプーなんだろうって追求したくなる。
それくらい、いい匂いだ。
「え〜ひどいぃ〜」
わざとらしいような泣きそうな顔した茉耶ちゃんは
何ともまぁ声優みたいな女性の声を発し
瞳には涙を貯めこんでいた。
どこの女優さんですかって聞きたくなるくらいプロの演技力だった。
すかさず、海ちゃんは
「キモい! キモすぎるわ、オカマ!」
と邪険にし、罵倒する。
「オカマじゃないもん!!」
茉耶ちゃんのことを'オカマ'と称した海ちゃんに茉耶ちゃんは否定する
「オカマじゃなければ何なのよ?」
「男だ!! ほら、見て! ちゃんと男でしょ?」
えっへんと胸を張る茉耶ちゃん。
いやいや、茉耶ちゃん? 今のあなたを見てどこを男と見えるのでしょうか?
逆にあたしが質問をしたいです。
今の茉耶ちゃんはまごうことなき美少女です。
しかも、トップレベルの。
町中に出たらすぐさまモデルのスカウトが来そうなくらい美少女だよ。
事実、去年の夏休みくらいに海ちゃん、茉耶ちゃんと一緒にショッピングに行った時、
二人ともモデルにスカウトされていた。
それくらい二人とも美少女なんだよね〜。
あ、1人は違うか。美少年だった。
二人に見惚れそうなあたしの隣には茉耶ちゃんのその答えにため息をつく海ちゃんは
あたしの肩を抱いて、
「ほぷら、こんなアホで馬鹿なオカマはほっといて、始業式に行くよ」
茉耶ちゃんに対してどこまでもクールな海ちゃんにあたしは苦笑いするしかなかった。