ちび×ひめ Ⅰ
始業式の会場は講堂で行われるため、在校生であるあたしたちは、掲示板に発表されているクラス分け表を見てから行くのが、始業式での決まりである。
始業式、早速からクラス順に席に座るためで朝一から、見ないとどこに並んでいいのか分からない。
なんでこんな面ど…いや、ややこしいのだろうか。
まぁ、この学校自体かなり変わってるから特に問題はないんだろうけど。
「あ。一応聞くけどさ。もしかしてだけど…あんた、その格好で始業式と入学式に出るつもりじゃないでしょうね?」
講堂に向かう足を止めた海ちゃんは、後ろを振り向き茉耶ちゃんに問う。
茉耶ちゃんの答えはノーコメントだった。
「茉耶ちゃん…まさか、その格好で出るの?」
「ぽぷらちゃん、海ちゃん。俺のこの格好は謂わばファッションなんだよ。だから、ありのままの自分を見てほしいんだよ、今の在校生たちや新入生たちに」
茉耶ちゃんは誇らしげに語った。
「何を言うかと思えば…。始業式、入学式はファッションなんか関係ないわよ! いいからとっと男子の制服に着替えてきなさいよ」
海ちゃんに同意だ。
確かにねー、始業式…ましてや入学式にはファッションは関係ないデスネ。
皆、同じ制服なんだし。
「俺はありのままの姿で出るからいいよ」
「何がありのままの姿よ!! 気色悪いわっ! 一年生が怯えるでしょ!」
「それはないと思う! はっきり言って似合ってる! 断言する」
「似合ってる似合ってないの問題じゃないわ! あんたは社会的環境に自体に悪影響だわ」
「それって、俺の存在自体が悪影響を及ぼしてるって言ってるようなもんだよ」
「そうよ」
「ひどっ!」
「酷くないわ。事実よ」
「そういう、海ちゃんだって――――」
言い合いの攻防戦をする海ちゃんと茉耶ちゃんをあたしはひたすら傍観していた。
数分後―――。
一向に終わる気配のないこの二人に、あたしは見飽きてしまった。
そろそろ止めなきゃいけないような…。
最初のうちは海ちゃんたちの言い合いに周囲に人だかりが出来たが、
まぁ、これも毎回のことだからと見飽きてしまった人たちもいるわけで
またか、という状況で今現在周りにいる人たちは講堂に行ってしまった。
「海ちゃん、茉耶ちゃん。もう時間がないよ? 早くしないと始業式始まっ――――」
二人に声をかけようとした、その時。
背筋にぞっくとした嫌な感じが伝わってきた。
なんだろう!?
この嫌な感じは…。
もしかして…また、なの?