君の涙にキスを ~燐&蓮編~
ある日の夕方。

麻子さんと雪兎の病室の前にある廊下の椅子に座っていた。


「優月ちゃん。最近、来なくなったわね~。」

雪兎に聞こえないように配慮しながら

廊下の電灯を見上げ、小さな声で麻子さんが話をする。


「ゴメンね。優、最近忙しいみたいで。麻子さん、寂しいの?」

優は、雪兎の記憶が自分だけ抜け落ちていると知った時から

この病室・・・いや、雪兎に近づくのを止めた。


もしかしたら、優は俺と同じ事を考えているんだろうか。

優は、雪兎を。

俺は、麻子さんを。

ヴァンパイアの世界に、これ以上巻き込みたくない。

そう思っていたりするんだろうか――――


何となく、優が雪兎を想っているのは気が付いていたから。
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