君の涙にキスを ~燐&蓮編~

「――――ゴメン、なさい。怒らないでよぉ~」

俺の左頬には、見事に手のひらの痕が付いている。

それは、もちろん俺の目の前で背中を向けている人が

付けたもので―――


俺は、ベッドの上で麻子さんが用意してくれた

大きめのTシャツと短パンを着ている。

それでも、女性用だから少し俺にとっては小さいけど。


「もう、知らない。燐君なんて、あの黒尽くめの化け物にでも襲われちゃえばいいのよ。それで、狼のまま何処ででも倒れてなさい。」

あ~あ、めちゃめちゃ怒ってる。

けど、今なんて―――

「あ、麻子さん。今、なんて―――?」


麻子さんは答える事なく、自分の口走ってしまった言葉に

後悔したのか両手で口元を覆っていた。

「ごめん。私、酷い事言った・・・」

「そうじゃなくて。いつから、知ってたの?」

< 43 / 131 >

この作品をシェア

pagetop