君の涙にキスを ~燐&蓮編~
「――――ゴメン、なさい。怒らないでよぉ~」
俺の左頬には、見事に手のひらの痕が付いている。
それは、もちろん俺の目の前で背中を向けている人が
付けたもので―――
俺は、ベッドの上で麻子さんが用意してくれた
大きめのTシャツと短パンを着ている。
それでも、女性用だから少し俺にとっては小さいけど。
「もう、知らない。燐君なんて、あの黒尽くめの化け物にでも襲われちゃえばいいのよ。それで、狼のまま何処ででも倒れてなさい。」
あ~あ、めちゃめちゃ怒ってる。
けど、今なんて―――
「あ、麻子さん。今、なんて―――?」
麻子さんは答える事なく、自分の口走ってしまった言葉に
後悔したのか両手で口元を覆っていた。
「ごめん。私、酷い事言った・・・」
「そうじゃなくて。いつから、知ってたの?」