きのこうどん
「山上じいちゃんも来るの?行こうよ。」
 
どう見ても外へ行く格好をしていた山上じいちゃん。
 
一緒に来るのだろうと思い、ボクは声をかける。
 
「アキ、お前さんたちだけで楽しんでおいで。じいちゃん、送って行くからな?」
 
そう言ってじいちゃんはボクの頭をなでた。

「わかった!カギ頂戴!」
 
ボクはじいちゃんから車のキーまで奪い、走って車庫へ向かった。
 
「ちこ、行こっ!じいちゃん早く!!」
 
そのまま予定通り5人で車に乗り込み、山上じいちゃんに劇の行われる舞台会場まで送ってもらった。
 
人形劇は「オズの魔法使い」
 
ある日、オズの国に竜巻で飛ばされた少女ドロシーがオズという名の魔法使いを訪ね、元の国に帰るという物語だ。
 
車で数十分、4人で会場に入るとちこはボクの隣に座りボクらを囲むように母さんたちが座った。
 
演技が始まるまで時間がある。ボクらは2人でうろうろうろうろ会場を探検していた。
 
「劇の間は静かにしないといけないよ?」
 
母さんにそう言われ、ボクは元気よく返事した。
 
「うん。わかった!」
 
母さんの
「~しないといけないよ。」
は口癖みたいなもの幼いでボクの行動を制限する言葉だ。
 
いつもなら母親の言うことを素直に聞いていたボクもその日は、話半分も聞こえていなかった。
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