きのこうどん
劇が始まるまで椅子の上に乗ったりちことしゃべってたりと、落ち着きがなかったボクは注意されて当然だったと思う。
 
正直、舞台はそれほど期待していなかったけど今、彼女たちと一緒にいるこの状況が楽しくて楽しくて体が自然に動いていたんだ。

開始のブザーが鳴るとあたりはだんだん暗くなり辺りは楽しみにしていた子どもたちがざわめきだす。
 
「ほらはじまるよ。」
 
ちこの母さんがボクらに言ってきた。
 
「こんにちは~。」
 
物語の主人公ドロシーの声が聞こえると同時に主人公のあたり照らすスポットライト。
 
赤白黄色さまざまな色が彼女を照らし目がちかちかする。
 
人形劇って名前の割には人形なんてものはまるっきり出てこず、舞台上には頭のでかい4等身の人々がたくさんいる。
 
劇中の着ぐるみたちは可愛げがなく、ハロウィンに出てきそうな者たちばかりで少し不気味だった。
 
そんな彼らが会場全体に響かせる声は来ていたみんなを圧倒させだんだん物語の世界へと引き込んでいく。
 
ボクもだんだんその演技に心を奪われまるでオズの国にでもいざなわれたかのように
 
「ボクなら魔法使いに何を叶えてもらうだろう?」

と、一緒に旅をしている気分にさえなっていた。
 
ふと、
 
気がつくと右手が暖かい。
 
演技の間、隣の席にいた
ちこはボクの手をぎゅっと握っていた。
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