きのこうどん

小学生になったとき弟、紫苑が生まれた。
　
ただでさえ小学生になったという環境の変化があったのに家も様子も大きく変わった。
　
最初の頃は新しい家族の誕生に喜んでいたけれど一緒に生活し出すにつれて不満が増えてきた。
　
自分のおもちゃやお気に入りだったベットが紫苑のものになり母親も紫苑にべったりで。
　
以前と違い母さんが一日中家にいる様になったにも関わらずあまり構ってはもらえずボクが少し何かをすると鬼のような顔で叱るようになったし。
　
そんな年の夏休み。
　
ボクらは初めて山上じいちゃんの実家に遊びに行くことになった。
　
山上じいちゃんは農家の生まれで婿養子として谷木家の人間になった。

山上じいちゃんの名前は谷木治。山上町ってとこに住んでる。
　
ボクらがなんで山上じいちゃんって呼ぶかっていうと、
そう呼んだ方が小さい子どもが
住所を覚えやすいだろうという父の教育論の賜物らしい。
　
そんな山上じいちゃんは
結婚した後も実家の農業を助けていた。
　
ばあちゃん曰く農家はいろいろと大変だからとマメにお金を振り込んだり土日には畑を手伝いに行っていたのだそうだ。
　
確かに、土日よく遊びに行っていたボクが知る限り昼間のじいちゃんの姿はほとんどなかった。
　
家の裏庭で畑仕事をしているか仕事だって勝手に思い込んでいた。
　
　
そんなことはともかく昔の農家ってやつは周囲と協力して生活してたんだ。
　
母さんも家族ぐるみの付き合いをしていたちこの母さんも昔はほぼ毎年この山上じいちゃんの実家に手伝いに行っていたらしいけどここ数年、ボクらが生まれてからは泊まりに来ていない様子。