きのこうどん
大きな畑を通り過ぎ坂を上るとゆるりゆるりと車は速度を落とし一軒の家の前で止まる。
 
蔵が脇にある日本家屋でこの家も屋根は瓦ではなくこれまで見てきた多くの家がそうであったように藁のようなもので出来上がっていた。
 
とってや窓なんかは水で濡れたズボンのように濃く色変わりし、少し噛みつけば塩の味が
染みてくるようなそんな感じの大きく広い家。

ドンと構えていて少しのことじゃびくともしなさそうな圧倒さと、何人もの人を抱えられる懐。
 
車が止まり父さんが出てもいいと言うと、待っていたかのようにボクはシートベルトを外し外へと飛び出した。
 
家の場所が日向にあったせいか山ばぁの家は通って来たどの家々よりもしっかりしたものに見える。
 
屋根の一番下にあるススキ色をした草が枝毛のように飛び出しているのがわかり手をのばして取ろうとしたが届かなかった。

この辺の地域ってのは何年も前から村おこしのために外からやってきた人を受け入れ農業体験を実地している。
 
そのため、民宿のようなものを兼ねているのか家にはそれぞれの家族が過ごせるためのスペースが設けられていた。
 
「こんにちは。」
 
玄関にはここの家の奥さんがいて庭で土いじりをしながら、ボクらを待っていたようだ。

「あぁ、こんなとこまでよう来たなぁ。車はその辺に止めとき。」

奥さんがそう言い父さんが指示された場所に
車を移動させた。
玄関は車が10台は軽く置けるスペースがあってすでにじいちゃんの車があった。
 
母さんは奥さんと何やら話している。旦那の双六さんと高校生の息子の哲っちゃんがどうとか。
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