きのこうどん
「そうか…わかったぞ。」

職員室の机の上にある3―7と書かれた閻魔帳を閉じ受け答えする笠井。

いつも面をかぶって表情の見えないこの鉄火面男も今日ばかりは真剣に、かつ同情的に言うものだから、少しは人の心があるものだと感心した。

「気ぃ落とすんじゃないぞ。がんばれよ。」

だって。
 
「がんばれよ」か。

んなと言われても。一ヶ月以上前から、

『そろそろ』

と言われ続けていたにもかかわらず今の今でもあまりピンと来ていない。
 
こうやって何かを言ってくれる人には
本当なら感謝しないといけないのかもしれないけど、
このときのボクにはこの言葉が嫌でたまらなかった。

誰かに簡単に事情を言うたび、
可哀想とか、がんばれとか、お大事にとか、
自分の感情を勝手に想像される。
 
それが嫌で嫌で事情はあまり人に話さなかった。

話したところでボクは他人が思うほど深く考えていなく、
それどころか本人は他人よりも他人事で、
事情を話すって行為はただ、周りから同情の目を集めているだけの行為でしかない。
 
そんな意味もなく他人に迷惑かける自分が嫌だった。
本当に迷惑な小僧だ。
 
話を聞いてくれた優しい人は「がんばれ」と言い、
ボクは彼等に軽い絶望を与えているのがよくわかる。

そんな会話の流れはボクにまで影響しかなりの失望を与える。

多分それが、ボクが今の状況を理解する一番の方法で、
一番目に見やすい現実で、一番読み取りやすい現在で…
そんなリアルさに触れるのが嫌だったんだと思う。
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