きのこうどん
山ばぁは昔の人なので方言でしか喋らない。
耳を澄ましてはいたけれどそれとは関係なく聞き取りにい。
 
大抵はわかるけど、時々よくわからない単語が出てくる。
 
「とうもろこしならどり採ってもええよ。」
 
どり?しばらく考えて返事をした。
 
「わかった。」
 
ボクらの任務は
まず、夕飯用の野菜の確保。
そのあとで、とうもろこしの搾取。
土を払い、野菜を収穫する。
そんな感じだ。
 
土の印象が砂場のものとは違い、
暖かくふんわりしていてさわり心地がいい。
 
「おかーさん。採ったよ!」
 
そう大きな声で報告したが母さんは父さんと仲良くしゃべっていて聞こえてなかったみたいだった。
 
「おかーさん。採ったよ!!」
 
「あら良かったね~」
 
自慢じゃないがうちの両親はらぶらぶだ。時々こうやってボクの話が流れる。
 
こうしてボクらは脇道にそれながらも
だんだん畑に慣れ、2、3個とうもろこしを採っては畑の脇に置いてある籠へ持っていくという作業を繰り返した。
 
手前の方がだんだん無くなり
少しずつ少しずつ
とうもろこし畑の奥へと進んでいく。
 
「奥に行ってるね!」
 
慣れてくれば身につけていた、
帽子や水筒なんかが邪魔になってきて畑の入口に放置し奥の方へと向かった。
 
畑の奥に行けば行くほど、
ちこは片手で
とうもろこしを採りながら
もう片方の手は
ボクのシャツをしっかりと掴んでいて
放そうとはしなかった。
念のため。らしい。
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