きのこうどん
「ね、ちこ。そろそろ大丈夫じゃない?ボク、首が痛い。服も伸びるしさ。」
 
こう彼女に願い出たけど本当はこの広いとうもろこし畑を一人で探検してみたくなっていたんだ。
 
あっちの方に行ってみたい。
向こうの方もきっと大きなとうもろこしがある。そんな予感がしたから。
 
でも、
 
「ダメ、アキト君すぐどこかに行くんだもん。」
 
だって。
彼女の方が一枚上手だったようだ。 
 
「そんなことないよ。」
 
とは言うものの、目は泳いでいたに違いない。自由を求め、ひとりで探検する気満々のボクの心境は彼女が折れる待ちだったのだから。
 
すると、
 
「兄ぃ~、兄ぃ~」
 
と、畑の入り口の方で母さんがボクを呼ぶ。
 
「あ、お母さん呼んでるから、ボクちょっと行ってくるね!」
 
「…うん。わかった。すぐ来てよ?」
 
じっと見つめた後の彼女の念の押し方はかなり怖い。
背中にひもが結ばれてるようなそんな錯覚があり、離れてはいけない気がするもののボクは彼女を残し畑を出た。
 
「何?」
 
「山上じいちゃん、スーパーに行ってくるけど何か欲しいものある?」
 
「ん~~~と~~~~。ない。」
 
一応、考えてみたがないものはない。
 
「ちこ~?なんか欲しいものある~?っだって?」
 
畑の奥の方に叫んでみたけど返事はなかった。
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