きのこうどん
「いらないんじゃない?」
 
そう母さんに答えた。
 
「それと、後、1個採ったら帰るよ。」
「え~?」
「だってほら、もう4時半よ。続きは明日ね。」

これから採取した野菜を区分けしないといけないから早めに切り上げたいようだ。
 
「う~。あと、3個採りたい!」
 
「そ?じゃ、先に行ってるから。そこの坂上ったらすぐ見える家だからね。」
 
「わかってるよ!」
「…兄ぃ。」
 
母さんがこっち見ている。
 
「何?」 
「あんた、服、裏表逆じゃないの?」

着ていたシャツは後ろの方がだらりと伸び
前首がぴっちりしていた。
 
「ちがうよ。」

母さん達が戻りはじめボクは
急いでさっき、ちこがいたはずの場所に戻った。
 
けど、そこにちこはいなかった。
 
「ちこ~?聞こえる~?」
 
ボクは周囲に聞こえるくらいの大きな声でちこを呼んだ。
 
「あのねぇ、後1個採ったら帰るって~」
 
わかったって聞こえた気がした。

一人になったボクはジャングルを駆け巡る探索隊気分で
 
「目標補足!確保せよ!ラジャー」
 
「…キャップだめです!とうもろこしが小さすぎます!」
 
「何?もっと大きな獲物を捜したまえ!」
 
なんて独り言を言いながら、とうもろこしの搾取を楽しんでいた。
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