きのこうどん
いつの間にか
ボクは大物を見つけ出すのに
夢中になっていた。
 
「これ駄目だな・・・小さいし。」
 
妥協を許さない精神は
しゃがみこみ奥を覗き込むようにして
とにかくしつこく目指す大きさのものを探した。
 
もしかしたら埋まっているかもしれない。
そう思い、土も掘ってみた。
 
でも
出てくるものは根っこだけの上
土はもう冷たくなっていて手が少し痛い。
 
葉を引っ張ったり、
なんでないのと逆切れしたり、
そこらじゅうを探し回って
ようやく、その最後の一つを見つけた。
 
「あった!!」
 
「ちこ~!おっきいのあったよ~。」

ちこの反応はなく、
とりあえずもぎたてを籠へ運ぼうと
畑の脇に戻ると誰もいなかった。
 
本当に誰も。
 
籠も、母さんも、父さんも、ちこさえも。
  
「お~いだれか~?」
 
澄みきった空には
この声を受け止めてくれるだけの
器量はなく
どこまでもどこまでも色着いた空が広がるばかり。
 
「誰も待ってくれないんだな。」

手にしたとうもろこしを見つめながらそう感じた。
 
家族って冷たいんだ。
紫苑が生まれてから
時々感じていたことだけど
強くそう思った。
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