きのこうどん
「お母さん、ちこいない。帰ってない?」
「え?畑にいない?」
 
3人で探したけど
それでも、彼女は見つからなかった。
畑のどこにもいない。家にもいない。
 
「誘拐された?それとも迷子?」
 
琉璃さんがぼそっとそんなことを言った。
 
「誘拐?そんなことある?ここ田舎よ?」
 
「でも、最近物騒だし。迷子だったとしても、もうすぐ暗くなるし心配よ。」
 
母さん達の会話はボクにも聞こえた。
ちこがいなくなったのはボクのせいだ。 
 
ボクがちゃんと一緒にいれば
こんなことにはならなかったのに。
 
ボクは一人で飛び出すと
ちこの行きそうな場所を探した。
 
畑から出た後、
山ばぁの家に行くための坂の隣には
もうひとつ坂がある。
ボクはそれに目が行った。
 
もしかしたらちこは家への
坂を登ったんじゃなくて
こっちの道に行ったのかも知れない。
そう思ってボクは急いでもう一つの坂道を上った。
 
坂を上ると、そこは丘になっていて
すぐに下り道となっていた。
黄色く危険と書かれた看板が立てかけてある。ただ、当時危険と読めたかどうかは別で。
そこは見事に切り開かれていて
丘からは夕日と一緒に遠くの街が一望できた。
 
「…。」
 
あの街の向こうにはボクらの家がある。
ボクは看板を左の方へと進んで行く。
 
「ちこ~帰るよ~」
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