きのこうどん
「汚いから触っちゃだめだ」
 
と、言いその証拠のドロドロの手をを見せたのに彼女はずっと、ボクの手を離そうとはしなかった。
 
「手はだめだってば。」
 
と言うと袖をつかんでいた。
 
しばらく、座り込んでいると
いろんなもの音がボク等の周辺を通過して行く。
 
「ヴォォン。ヴォォン。」
 
大きな悪魔がうめくように
カエルが、鳴いているのが聞こえた。
多分、牛蛙だろう。
 
太陽が沈むとこの土地は虫や
小動物たちの世界に引き込まれていった。
 
「はぁ。」
 
だけど、ボクは彼女に
ジュースを買ってあげられなかったことが
残念だった。
 
迷子にさせた上にジュースを上げられなかったことが残念だった。
 
リンリンリンリン。

ふと、彼女が何かに反応する。
虫の音にではなさそうだ。
  
「何か聞こえない?」
 
ちこがさっきのことに尾を引き
ため息をつくボクにそう言った。
 
ガサッ!
 
「…草木の揺れる音のこと?」
 
彼女は首を振った。
 
ちょろちょろちょろ…
 
確かに聞こえる。
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