きのこうどん
随分古いポールはさびさびで色がかなり黒ずんでいて、そのためにここがバス停だと気がつかなかったのだろう。
 
ブロックの建物は待合室らしく、『彦三山』と書かれていてその奥の方を少し覗き込むと古い公衆電話が置いてあり、天井を見ると電灯らしきものが付いてあるにはあるが球が取り付けてなく使われているのかどうかさえ疑問だった。
 
「バス停?」
 
ボクはそんなバス停に希望を持ったんだ。
 
「ちこ、ちこ見てよ!電話があるよ!」
 
待合室の奥にあった電話を見たボクはすかさずちこに報告した。
 
「電話して、ここまで迎えに来てもらおうよ。」
 
そして、ボクは母さんに電話をかけ迎えに来てもらうことにした。
 
「アキト君。電話するのにお金ないでしょ?」
 
電話をかけようと受話器と持ち出したボクににちこが不安そうに言った。
 
「大丈夫だよ。」
 
ボクがお金を拾ったこと彼女は知らなかったのかもしれない。ボクは、さっき自動販売機の下で見つけたなけなしの15円とメダル2枚を彼女に見せた。
 
「ほら、1回だけなら電話できるよ!」
 
そう言って今度こそ電話をかけた。
 
「ね、ここ『ひこさんやま』って読めばいいんだよね?」
 
そんなことをちこに確認しながら受話器を持った。
 
受話器をとるとツーと言う音が聞こえていた。
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