きのこうどん
使える。
 
制限時間は60秒。
 
幼いながらにも短い時間しか話せないだろうと言うことがわかっていた。
 
-プルルル、プルルル-
 
ガチャ。
 
「あ、お母さん?」
 
ボクが話すと同時に母さんが話し出した。
 
「アキト?アンタいったいどこにいるの?心配しているんだから。いったいどこにいるのよ。」
 
と、こちらの言葉を言うタイミングをくれなかった。
 
「ちこちゃんもいるの?寒くない?」
 
「うん。見つけた。」
 
「お母さんらは今、あんたたちを探して山ばあちゃんの家にいるの。もう少しで警察に連絡するところだったのよ。」
 
とにかく、時間が過ぎてゆく。 
 
『ひこさんやま』って書いてあるバス停のところにいる。
 
たったそれだけのことなのにその一言が切り出せなかった。

「お母さん。」
 
電話の向こうではとにかく喋りまくっている母親。
 
「お母さん時間がないの!聞いて!」
 
子どもの無事を確認した親はとにかくその心配していた様子を話すのに一生懸命でボクらの状況を聞いてくれる感じではなかった。
 
「ちこちゃんのお母さんに変わるからちこちゃんの声聞かせてやりなさいよ。」
 
ホントこのとき人選ミスと言う言葉を知った。
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