恋の矢
 ずんずんと、ヨワリは森を歩く。
 その顔は、先程よりも唇が突き出、まるで拗ねている子供のようだ。

 元々幼い顔ということもあるが、こういう態度がまた、さらに彼を幼く見せる。
 彼自身には、全く自覚はないのだが。

「全くトロケの奴。皆の前で、言いたいこと言いやがって・・・・・・」

 ぶつぶつと文句を垂れる。
 実際は『言いたいこと』というよりは『痛いところ』と言ったほうが正しい。

 ヨワリは恋というものをしたことがない。
 いや、幼馴染みのことは、それなりに好きだという想いはある。
 が、如何せんずっと一緒にいたような女子だ。

 それなりの歳になり、周りが結婚し出せば、何となく自分はこの子と結婚するんだろうな、と思い始めたし、実際そうなった今も、やっぱりね、という感情しかない。
 嫌な訳ではないのだが。
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