恋の矢
---トロケとかがよく話してる、どこの姫君は凄い美人だとか、町で心惹かれる娘を見たとか、そういうのって・・・・・・ないなぁ。そんな、その人しか見えなくなるとか、その人のことしか考えられなくなるとか、どういう感じなんだろう?---

 悔しいから、仲間内ではこんなことは口にしない。
 どうせまた、『ヨワリは、まだまだ子供だなぁ』と、さっきのように笑われるだけだ。

 考えるうちにムカムカし、ヨワリは乱暴に、前方に茂る木を薙ぎ払った。

 その途端。

「きゃっ!!」

 聞き覚えのない、小さな悲鳴。
 驚いて顔を上げたヨワリの目の前に現れたのは、これまた驚いた顔の少女。

 しかも、ヨワリの前に広がっているのは、泉だ。
 考え事をしながら歩いているうちに、森の奥の泉まで来てしまったらしい。

 いや、そんなことはどうでもいい。

 目の前に広がるのが泉だということは、少女は水浴びの最中で。
 とすると、当然何も身につけていないわけで・・・・・・。

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