恋の矢
「しししし失礼っ!!」

 頭がそこまで理解した瞬間、ヨワリは勢い余って何回転かする勢いで回れ右した。
 とはいうものの、目にはしっかり少女の驚いた表情、そして真っ白い、剥き出しの背中が残っている。

 頭は働いてなかったのに、見たものはしっかりと残るものなのだな、などと思いながらも、胸の鼓動は収まらない。
 このような衝撃、今まで感じたことはない。
 口から心臓が飛び出しそうだ。

 それにしても、と、その場に突っ立ったまま、ヨワリは考えた。

 一瞬しか見ていないが、何と可愛い少女だったのか。
 どきどきと早鐘を打つ胸を押さえながら、ヨワリは、はっと気がついた。

 これが、恋というものか。

 トロケの言っていた、一目で恋に落ちるというやつだな、と思い、ヨワリは拳を握りしめる。
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